2013/03/07

『フライト』Flight



Il y a une brève critique en français au bas de la page.



原題:Flight
監督:ロバート・ゼメキス
Robert Zemeckis
撮影:ドン・バージェス
2012年アメリカ 139分カラー
出演:デンゼル・ワシントン、ケリー・ライリー、タマラ・チュニー
Denzel Washington, Kelly Reilly, Tamara Tunie
2013.03.05 シネマQ ホール5レイトショー
映画度:★★★/5*

予告編を見ただけの予備知識で観にいった。「男は一夜にしてヒーローになった。フロリダ州オーランド発、アトランタ行きの旅客機が原因不明の急降下。ウィトカー機長は墜落寸前の機体を回転させ、背面飛行により緊急着陸を成功し、多くの命を救う。それはどんな一流パイロットにも不可能な、まさに奇跡の操縦だった。マスコミがウィトカーの偉業を称え、彼は一躍、時の人となる。ところが、ある疑惑が浮上する。彼の血中からアルコールが検出されたのだ。あの日、機内で何があったのか―? 果たしてウィトカーは、真の英雄か、それとも卑劣な犯罪者か―?多くの人々の人生を巻き込む、驚愕の真相が暴かれる。」というのが公式サイトの解説だが、予告編(日本版)もほぼこの線で作られていた。自分はパニック映画は特に好きなジャンルではないが、飛行機好きだからその「奇跡の操縦」のシーンに惹かれて見にいった。


実際には人間ドラマで、もっと限定すれば「アル中もの」だった。アル中ものと言うと、古典的作品ではワイルダーの『失われた週末』(1945)があり、これも既にかなり古いがジェーン・バーキンとジャン=ルイ・トランティニャンが出演していたレジス・ヴァルニエ監督のフランス映画『悲しみのヴァイオリン』(1986)、そして男女を入れ替えたものではメグ・ライアンの『男が女を愛する時』(1994)などが思い出される。今回のこの『フライト』も派手な航空機シーンはあるものの、基本はこれらの作品と大差はない。だから正直「今さら?」感、「また?」感は否めない。ただこの映画では女性の客室乗務員も以前にアルコール依存症の治療プログラムを受けたことがあるという設定だし、アメリカでは日本よりはるかに薬物(麻薬・覚せい剤)の問題もあるだろうから、今日でもこの映画のテーマはアメリカ的には深刻なものなのかも知れない。


でもそれはそれとして、この作品を見ながら、あるいは見終わって、なにか釈然としないモヤモヤが残った。それは何故だろう?。副操縦士ケンとその妻、客室乗務員マーガレットなどのバプティスト系プロテスタントの信仰が必要以上に描かれていたからだろうか?。いや違う。後で事故で入院したウィトカーが病院で出会うことになるニコールのそれまでのことが、映画冒頭から航空機事故シーンと平行して描かれるそのあり方のちょっと不器用な脚本・編集のせいか?。いや違う。だいたいこれは139分のこの長い映画の最初の方のことでしかない。そして気付いたのは、問題はデンゼル・ワシントンの演じる主人公の機長ウィップ・ウィトカーの人物像だということだ。


この機長ウィトカー、酒を飲んで酩酊してはコカインで覚醒するという状態で旅客機を操縦するというとんでもない輩ではある。妻に出ていかれティーンの息子にも嫌われているけれど、それはアル中が原因であり、妻に出ていかれたからアル中になったわけではない。弱い人間だということは理解できても、彼をアル中に追いやったものが何であったかがほとんどわからない。ウソでかためて自分の体裁を作り上げてきた彼なのだとは思うけれど、その何故がわからない。兵役時代は優秀なパイロットであったらしい。飛行機やその操縦は好きだろう。そして旅客機のパイロットになれた。結婚もし子供も出来た。その彼はアル中になった。それは何故?。だから「ウィップ・ウィトカーはアル中の機長」という設定だけが最初からあるのみなのだ。


「高度3万フィートで突然機体トラブルが発生した。普通のパイロットならば墜落していたところを、ウィップ・ウィトカー機長の天才的操縦術で大惨事になる人口密集地も避け野原に不時着。乗員・乗客102人の内死者は6名のみ。」という航空機パニック映画(シーン)を、「その機長を最初から設定のための設定でアル中とし、その彼のアル中ドラマを描く」というアル中もの映画にくっつけただけであり、前者になかなかの醍醐味はあるが、メインであるはずの後者が人物描写、あるいは初期設定としていまいち十分に描かれていない。これがこの作品の全体としての印象だ。


このサウスジェット227便アトランタ行きがオーランドを出発するときには、高度3万フィートで昇降舵が動かなくなることなどわかってはいなかった。だから酒が残った状態で乗務した(さらには機内でアルコールを摂取した)ウィトカー機長の、飲酒に関する点には言い訳の余地はない。しかし問題は3万フィート上空で機体が故障し、事故後にシミュレーターで実験されたように他のパイロットでは墜落して乗員・乗客102名はすべて死亡し、墜落地点によっては市街地・人口密集地でさらに人的被害が出たかもしれないのを、このアル中のパイロットは天才的操縦技術と判断で死者を6名に押さえることができた。


この神業的緊急着陸をし得たことで、飲酒の問題は免責にしてもよいのか?。あるいはマスコミや大衆がこのことをどう考え、判断するか?。やったことは見事で人命も多数救ったが、そのこととは無関係ながら飲酒操縦という罪を犯した機長をどう評価するのか?。実は予告編からボクが期待したのはそういう問題が描かれていることだった。単にボクが予告編のメッセージを誤解しただけかも知れないが、そう誤解させるような予告編の作りであったことも事実だ。アル中の個人ドラマではなく、社会ドラマだったらな、と思う。




*註:★5個を満点とした映画度の評価に関しては後日説明の記事をアップする予定(既に一部アップ済み)。簡単に言えばどれだけ映画的な映画であるかということで、作品の良し悪し・好き嫌いとは無関係。




2013.03.07   
ラッコのチャーリー


En regardant la bande annonce, j'ai erronément cru que ce soit un film d'un drame plus social, c'est à dire le problème qui existe entre le pilotage miraculeux qui a sauvé la vie de tant de personnes et le pilote qui avait pris de l'alcool. En quelque sorte «Est-ce qu'on peut (ou doit) le tolérer d'une certaine manière, puisqu'il a sauvé beaucoup de vies? Puisque si ce n'était pas lui le pilote, tout le monde à bord et aussi des personnes sur terre seraient tués probablement». Cependant Flight est un film d'un simple drame démodé de l'alcoolique de ce pilote. Certes les scènes de l'avion sont magnifiques mais tout le reste est très médiocre dont on ne comprend pas très bien le pourquoi de l'alcoolodépendance du héros. Comme actrice, Kelly Reilly jouait bien et charmante; je l'aime bien depuis L'auberge espagnole.
(écrit par racquo)





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