原題:Ted
監督:セス・マクファーレン
撮影:マイケル・バレット
2012年アメリカ 106分カラー
出演:マーク・ウォールバーグ、ミラ・キュニス、サム・J・ジョーンズ、ノラ・ジョーンズ、トム・スケリット
2013.02.26 シネマQ ホール5にて
映画度:★★★/5*
この映画はただ単純に楽しみましょう。それ以上を求めると失望するかも知れません。IMDbの観客評を見ると全平均は7.1/10。この作品は若者を描いた映画ではなく35歳のただの男を主人公としているのに、若年ほど(特に男子)高得点を付けている。物語に深みはないということでしょう。
簡単にストーリーらしき(ここで「らしき」と書いたことは後で説明します)を書くなら、友だちを作れない孤独な8歳の少年ジョンはクリスマスに大きなテディベアーをもらう。このぬいぐるみ、胸のあたりを圧迫する(たぶん)と中に仕込まれた音声装置で「I love you.」と音が出る。友だちのいないジョンはぬいぐるみに話しかけるが、もし本当に言葉をしゃべったらと強く願う。するとなんと不思議、ぬいぐるみはあたかも生きた人間のように歩き、動き、話をするようになる。ここまでが導入部分。
メインの話はその27年後の現代。ジョンは35歳。相変わらず(まあ子供時代のぬいぐるみとの約束を守ってのことでもあるけれど)生きたぬいぐるみとなったテッドと男同士の仲間として仲良く一緒に暮らしている。テッドは昔は驚異の生きたテディベアーとして世間にもてはやされ、テレビ出演などもしセレブ扱いだったけれど、今ではほとんど忘れられ、下ねた連発で女好き、ドラッグ好きの不良中年のオジサン・ベアーとなっている。いつから一緒に暮らすようになったかはわからないけれど、ジョンには4年前からつきあっている彼女ロリがいて、男女としては相思相愛、二人はそれぞれ結婚も期待している。でもロリとしてはジョンの悪友テッドの存在がウザくなってくる。そして…、というもの。
この映画の成功点は、アニメーションとのモンタージュとかではなく、実際に動き(表情もある)、話す(声はもちろんアテレコだけれど)ぬいぐるみを登場させたこと。テディベアーだから見た目は可愛らしいのだけれど、中身は中年のオジサンというギャップが面白い。この映画の物語から言えば、オジサンだけれど憎めないコミカルなキャラの人物をジョンの仲間として登場させてもほとんど同じストーリーは描けると思う。まあその場合不自然になってしまうので同居というわけにはいかないだろうけれど。
見た目が可愛いだけではなく、人間に近いけれどあくまでぬいぐるみということで、どこか保護してやらねばならない面を持っているのがテッドのテッドたるゆえん。見方を変えれば、テッドはジョンという人間の一部分を別人格として具現した存在と見ることもでき、そういう作りをメインに用いればもっと深い映画を作ることも可能だったろう。その場合には最後にテッドに消えてもらうことがストーリー上の必然とはなるが。
さて最初の方に書いたストーリーらしきということについて。これが実はこの映画をボクがあまり評価しない理由だ。最初なぜこの愛らしき映画を自分が素直に肯定できないのかちょっと考え込んでしまったが、だんだんにわかってきた。この映画の話の流れを簡単に示すと、ややネタバレにはなるけれど次のように要約できるのではないだろうか。
テッドとジョンとロリの同居(上手くいかない)
↓
テッドの別居やロリとジョンとの不和
↓
テッドとジョンとロリの同居(上手くいく)
映画が描くのは主に中間部分であるゴタゴタだ。でもそのゴタゴタの前後で、実は何も変化していない。「テッドとの同居にロリが拒否を示し、最初はうまく行かなかったが、中間部分のゴタゴタを経て、ロリなりテッドなりジョンが成長したとか、相互理解が成立し、最後には上手くいくようになった」というのなら良いのだが、この映画の作りはそうではない。最初と最後で人物の成長や変化は感じられない。つまり映画は中間部分のゴタゴタを描いているだけなのだ。これではまったく不毛だ。つまりこの映画にはシーンはあっても、ストーリーがない。
そして『フラッシュ・ゴードン』をはじめとする映画その他に対するオマージュや引用は、サム・J・ジョーンズまで登場させているのだが、実のところこの作品の全体と必ずしも噛み合っていない。なにかとってつけたようにしか感じられない。こういう方向でいくなら、もっとちゃんとやるべきだ。つまりはこの映画、動き・しゃべるぬいぐるみテッドを登場させた以外は、すべてが中途半端。だから最初に書いたように、ただただテッドの出るシーンを単純に楽しみましょう。ストーリーらしきはないのだから…。
*註:★5個を満点とした映画度の評価に関しては後日説明の記事をアップする予定(既に一部アップ済み)。簡単に言えばどれだけ映画的な映画であるかということで、作品の良し悪し・好き嫌いとは無関係。
2013.03.02
ラッコのチャーリー
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